Thursday, September 17, 2009

彼の庭


近所に、手入れの行き届いた庭の家がある。フェンスには薔薇が生い茂り、そこここに配置されたプランターには季節の花が咲き乱れている。かと言ってメルヘンになりすぎる事もなく、上品さを保っているその様相は、とても素人のなせる業とは思えない。専門家に依頼しているのだろうか?お金持ちなのかもしれない。

その家の前を通るたびに、家主に対する私の妄想は膨らんで行った。


そしてついに、私はその主に遭遇したのであった。


自らプランターの手入れをしていた彼の頭部は、彼の庭の花々とは対照的に荒廃しており、全く手入れがされていない状態であった。そんな、自分を顧みずに花々に献身する彼の姿に心を打たれつつも、左耳上のみに集中して長い毛髪が垂れ下がった頭部を凝視する事を、私はやめられなかった。


あれは、どうしたものだろうか?


片側の耳上だけの毛髪を伸ばし、それで剥き出しの頭頂部をくるむような形で反対側の耳上まで持っていくという、あの手法。反対側からの風に、めっぽう弱い、あの手法。

どうして片側だけ伸ばすのか?

(おそらく、七三分けの延長なのだろうが。)

両方伸ばしてみたらどうだろう?

そうすれば、伸ばした両側の髪を、交差する事ができるではないか。

頭頂部で交差させた毛髪を、スプレー的なもので固定する。(勿論、頭皮に優しい、このヘアースタイル専用のものを作るのだ。)そうすれば、どちら側から風が吹いても、垂れ下がってしまう事態は避けられるであろう。

もしくは、伸ばした両耳上の毛髪を頭頂部で結ぶ、という、新しいヘアースタイルを作ってしまうという手もあるのではないか?


そんな妄想をしているうちに、家に着いた。

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