Tuesday, October 26, 2010

チビのこと


7年間住み慣れた街を引っ越した。
(まだ少し荷物が残っているから、正確には引っ越している最中だ。)
残りの荷物を片しながら、少しずつ、この街にお別れをしていこうと思う。

1番の心残りは、チビのことだ。
なぜその猫が、「チビ」と呼ばれていたのか、近所の子どもたちが「チビ、チビ」と呼んでいたから、私も「チビ」と呼んでいたが、さっぱりチビではなかった。むしろ、小太りで、猫のくせに全く締まりのない身体つきで、お腹のお肉なんて、たぷたぷしていた。大方、子猫の時に、適当につけられた呼び名だろう。子猫はみんなチビなのに。

チビは、やけに人なつこい猫で、私が通りかかると(誰にでもしていたのかもしれないけれど)「にゃあ」と鳴いて、腹を見せた。初対面だった。

それから私は、用もないのにその道を通るようになった。
毎回会えるわけではなかったが、チビはいると必ず「にゃあ」と言って、腹を見せた。
時には、帰ろうとする私の靴を踏んで、「まだいいじゃないの」と引き止めた。

チビは雉虎なので、少し離れた場所にいると、道路と同化して分からなくなる。そんな時チビは、遠くから出来る限りの大きな声で、息が続く限り長く「にゃ〜〜〜〜」と鳴き、自分の存在をアピールしながら、締まりのない身体で駆け寄って来た。呼ぶと寄ってくる猫はいるけれど、駆け寄って来る猫なんて、見た事がなかった。可愛かった。

チビは、私のかごバックが大層お気に入りで、おでこを当てつけたり、身体をすり寄せたり、時には舐めたり、噛んだりした。無粋な話だけど、そう安いバックではなかったし、お気に入りのバックだったけど、私はチビのやりたい放題にさせた。バックに戯れるチビを見ていると、幸せな気持ちになった。
だから、もうすぐ冬が来るというのに、私は未だにかごバックをしまう事が出来ずにいる。「季節外れな人ね」と思われているかもしれない。でも持ち歩かずにはいられない。どうせいなくなってしまうのだから、いなくなってしまうまでは、使い続けようと思う。

ここ数日、雨が降ったりやんだりで、チビに会えない。
もう1度、ちゃんとチビに会って、バックで遊ばせたい。
引っ越しが済んだ後も、会いに来る事は出来るけれど、その時チビがいるかどうかは分からないのだ。
タイミングが合わなくて、もう2度と、会えないかもしれない。
それに、会えたとしても、チビはもう私のことなんて、忘れてしまっているだろうから、あの「にゃ〜〜〜」という鳴き声は、聞けないかもしれない。

あの鳴き声は、「ゴハンをちょうだい」でも「遊ぼう」でもなくて、ただ「いるよ、いるよ」と言っているのだと思う。
新しい土地で、新しい猫と仲良くなって、その猫のことを、チビと同じくらい大好きになるかもしれない。
でも、鳴き声を聞くたびに、「あ、これは『いるよ』じゃないな」と思うのだと思う。
もっとずっと時間が経って、チビの事を忘れてしまっても、猫の鳴き声を聞くたびに、何か引っかかって、でも何だったか思い出せないような、そんな気持ちになるかもしれない。
引っかかることすら、なくなってしまうのかもしれない。
今は、それがとても寂しくて、こうして書いているのもまた別の方向から寂しくて辛いのに、忘れたくなくて、書いている。自分が飼っている猫でもないのに、バカみたいだと思うし、真面目な内容になってしまって、ほとほと恥ずかしいのに、覚えていたくて、書いている。出来る事ならふざけた内容にしたいのに、こんな風になってしまった。

今日も、「今日こそは会えますように」と祈りながら、あの道を通ろうと思う。

Sunday, October 10, 2010

彼女に片想い


昨日は、大好きな友達の結婚式だった。
そうだよな、彼女の周りにいる人は、こういう人たちなんだよな、と思える、明るくて楽しい人たちが集まっていて、本当に素敵な会だった。

彼女と初めて会ったのは、今から7年前の、ちょうど今頃。
私は突然絵の勉強がしたくなって、社会人向けの夜間の専門学校に通う事にして、その初めての日。
小心者の私は、早めに着いてボーッしながら(内心はドキドキしながら)、始まるのを待っていた。だんだん人が集まってきて、あー、もうすぐ始まるな、という時。
やって来た彼女に、私は一目惚れしてしまった。

「あ、あの子と友達になりたい。」

その後は、授業中もなんかそわそわ、でも話しかけるきっかけがなかった。(まるで奥手な10代男子みたい!)
授業が終わって、洗い物をしに水道に行くと、ちょうど彼女が筆を洗っていた。
わ〜なんか映画みたいなパターン、と思った。

「私、同い年なんですよ。」
自己紹介の時に聞いた彼女の年齢を覚えていて、それくらいしか出てこなかったのだけど、そんなどうしようもない一言がきっかけで、一緒に帰って、仲良くなった。

少し経ってから、「学校で一番仲良くしてる子が、面白い子なんだよって、彼に話をしたんだよ」と言われて、すごく嬉しかったのを、今でも覚えている。

その当時、「blue」という映画がやっていて、さすがにあそこまでじゃないけど、友達だけど憧れてしまうあの主人公の気持ちに、自分の気持ちを重ねたりして、憧れるのに、嫉妬する気持ちが全然出てこないのって、すごいな、彼女の人徳だな、と考えたりしていた。

彼女と私は、顔立ちと、ぱっと見の雰囲気が似ているみたいで、先生からは、「未だに区別がつかない・・・」と言われたりして、私は内心かなり喜んでいた。他人と区別がつかないって言われて、普通だったら嬉しいはずないのに。

根っこの部分が、彼女はカラッとしていて、私は根っからの根暗で、正反対なんだけど、ある部分で似ているところがあるのか、それともただの偶然かもしれないけど、当時同じような恋愛をしていたりして、2人で同じような愚痴を言い合ったりして、なのに他人事みたいに笑えたりして、なんとなく、似たような人生を歩いて行くのかなぁ、なんて、思っていたのだけど。

突然に、本当に突然に、素敵な人を見つけてしまって、びっくり!
でも、そこがまた彼女らしいな、と思った。
勝手に似たような人生を歩いていくのでは、と思っていた私は、彼女がお嫁に行ってしまうのが、実は少し寂しかったのだけど、昨日の彼女と旦那さんを見ていて、「あ〜本当に、自分が自分らしく居られる場所を見つけたんだな。」と思って、温かい気持ちになった。

でも、家に帰って、ぼんやりと思い出していたら、「あ、違うな」と思った。
彼女は、いつ誰といても、いつも彼女なのだ。
話し方も、表情も、声の高さも、いつも同じ。
そういう飾らない所と、絵が上手いところに、私は憧れていたのだ、ということを、思い出した。
だから、自分らしく居られる場所を見つけたわけではなくて、自分が居たい場所を見つけたんだ、と、(勝手な答えだけど)わかったら、「やっぱりすごいな!」と思って、じんわりして、ほろりとした。
ひとりお風呂でのぼせながら。

ずっとずっと、お幸せに。