何日の事だったか定かではないのだけれど、昼間暖かかったのに夕方になって急に冷え込んだある先日、友人から電話があった。
「マンションの入り口に、巨大なカエルがいて一向に動かない。恐ろしくて家に入れない。生きているのか死んでいるのかさえも判別できないような状態である。」
私が田舎育ちで、そういった事(カエル関係)に詳しいと思ってのSOSだったのだろう。
私はこう答えた。
「それは寒くて身体が冷えて動けなくなっているのだから、お湯をかけてやればよいのだ。」
友人は、私に大層感謝して、電話は切れた。
電話が切れた後で、私は思わず「キキキ!」などと実際に声に出して笑ってみたりした。
嘘だった。
今頃、カエルの為に湯を工面してかけているであろう友人の姿を思い浮かべると、愉快で仕方がなく、その後も何度か「キキキ!」と言って一人楽しんでいると、再び電話がなった。
「言われた通りに湯をかけてみたら、奴は植え込みの中に消えて行った。何とお礼を言ったら良いものか、言葉が見つからないほどだ。」
と、ひとしきり感謝され、電話は再び切れた。
良い事をした。